Block House

exhibition

ヒロシマシティアパート展

2015年11月06日 > 2015年11月15日
exhibition
都市が荒廃している。半世紀前に整備されたインフラは朽ち果て、街には失業者が溢れ、高齢者の叫びが方々で聞こえ、あらゆる文化が衰退し、外部からの情報は遮断されている。今はかろうじて体裁を保っているように見えるが、このまま状況が進行すれば、行き着く先は焦土である。どうすればそれを回避できるのか、誰にもわからない。問題はあまりにも複雑で、すべてを把握している人はどこにもいないからだ。

そんなのは当たり前だ、とその街は自嘲的に笑う。そんなことに今さら気づいたのか。もう手遅れだ、わたしを見てみろ。ヒロシマシティアパートは何千もの声が入り混じった不思議な声色でそんなことを言う。東京から七〇〇キロメートル彼方、広島の中心部に孤島のようにして聳えるその街は、わたしたちの都市に亡霊のように降り立って警告を発する。一般的には「基町アパート」の名で知られるその街は、広島を代表する巨大な公営住宅であり、広島という都市全体を象徴し、なおかつ、街自体が、圧縮された都市のような構造を持っている。だが、近年では主に高齢化と多国籍化によってコミュニティが機能不全に陥り、わたしたちの都市に先んじて、滅びのシナリオが顕在化している。

そもそも、ヒロシマシティアパートは七〇年前の焦土の上につくられたのだった。原爆投下によって壊滅した軍事施設の跡地、そこに建設された戦災者のための応急住宅が街の起源である。その後、不法に建てられた住宅群が密集していき、最終的には、六三〇戸の中層住宅と、都市機能を併せ持った二九六四戸の高層高密度住宅へと再編された。その過程でさまざまな人々が定住することになり、現在では、被爆者・戦災者に加え、在日コリアン、中国残留孤児とその子孫、また、アメリカや中国、ロシア、インド、ネパールなど、さまざまな国籍を持つ人々が暮らしている。軍事都市から平和都市へ。ヒロシマシティアパートは広島という都市の映し鏡だ。とはいえ、今や急激な高齢化と多国籍化によってコミュニティの分断が顕著になり、ふたたびの焦土に向けたカウントダウンが刻まれ、残り時間はごくわずかになった。

人は移動し、繋がり、密集する。その究極形を体現したヒロシマシティアパートは、わたしたちの都市にとっての黙示録なのだ。それを厳密に描き出した先にのみ、新しい都市の姿は構想されうる。[佐々木俊輔]

[展 開] BlockHouse 4F
浅野堅一は、幼少時からヒロシマシティアパートで暮らし、近年では写真家として、次第に年輪を重ねるこの街の空気と向き合ってきました。また、佐々木俊輔は、ヒロシマシティアパートをおよそ二年間にわたって取材し、住民が持つ多様な物語に着目してきました。ここでは、浅野・佐々木による活動の成果をベースとしながら、サウンド・ディレクションに牧 唯(Aprl)、ナレーションに福永朱梨を迎え、ヒロシマシティアパートの中身を総合的に展開することを試みます。

[交 差] BlockHouse 3F
影山萌子は、東京生まれの若き画家ですが、その世界観は、終末的でありながら、一度終わったあとで何かが始まるという予感を孕むものです。BLOCK HOUSEの三階はいつも新しいアーティストや来場者を受け入れてきましたが、ここでは影山が描き下ろす新作によって、ヒロシマシティアパートと東京が交差します。

[潜 伏] BlockHouse BF
ガタロは、ヒロシマシティアパートの商店街で、三〇年以上にわたって、清掃員をしながら絵を描き続けてきました。商店街の薄暗い一室をアトリエとし、誰の目にも触れることなく、ひっそりと、まるで街に潜伏するようにして作品を制作してきたのです。そこで積み重ねられた成果は、ヒロシマシティアパートの思想的な基礎をなします。ここでは、BLOCK HOUSEスタッフ・risutesuが企画・取材を担当し、地下空間にその思想を移植します。

ヒロシマシティアパート
東京─広島、都市現実のコントラストをめぐる展覧会

BLOCK HOUSE(原宿) BF/3F/4F
2015年11月6日(金) – 15日(日)*11日(水)休館
12時 – 20時[入場無料](初日は16時から、最終日は17時まで)

佐々木俊輔(作家)
浅野堅一(写真家)
牧 唯(Aprl、音楽家)
福永朱梨(役者)
影山萌子(画家)
ガタロ(清掃員画家)

risutesu(BLOCK HOUSE)
YellowYellow(デザイナー)

主催:ヒロシマシティアパート展 実行委員会
企画:佐々木俊輔、risutesu
宣伝デザイン:YellowYellow
後援:筑摩書房、中国新聞社、中国放送

*オープニングパーティ:11月6日(金)18時より会場3Fにて
[出演]
Yui Maki × VaEnc(Sound & Visual performance)
原田茶飯事(Acoustic Live)
熊谷拓明(Dance Performance)

http://hiroshimaca.com/
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