Block House

exhibition

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華雪 個展「光」

2018年07月01日 > 2018年07月15日
exhibition
【ARTIST COMMENT】

「光」の字のなりたちを辿ると、ひとの頭上に大きな火が描かれたかたちとある。
字がつくられた当時の古代中国では、ひとびとにとって火は神聖なものであった。そのため「光」は、火を守るひとを描いたものだと考えられている。やがてそれが転じて、火の「ひかり」そのものを意味するようになった。

いつ頃からか書き上げた書の仕上がり具合を見るために窓辺に吊るすようになった。ある朝、窓から射し込む光で紙が透ける様子に目が留まった。陽射しがうつろうにつれて紙の様子もすっかり変わる。一枚の紙の持つ豊かな表情に驚いた。

親しくしている紙屋さんで、中国、韓国、日本それぞれの土地で漉かれた手漉き紙を見せてもらったことがある。
「日本統治時代の朝鮮では日本の製法で紙漉きが行われていたそうなんです。この韓国の紙は現代のものなんですが、古い技法を未だに守っている工房で、当時の技法のままでつくられているんです。でも今の日本にはそうした古い技法を行う工房はないんですよ」。紙屋さんはそんな話をしながら、大きな紙を机の上にひらりと広げた。薄く、とても軽やかな様子が印象的だ。
「こっちは日本の紙です」。そう言って、韓国の紙の大きさからすると半分以下の小さな紙を広げてくれた。目が詰まっていて、しっかりしている。「紙を干すために板を使うんですけど、日本では大きな木が育たなかったんです。だから板の幅もおのずと狭くなって、次第にその寸法が定型になったそうなんです」。

日本で使われている紙漉きの技法は、すべて中国から伝えられたものだ。紀元前2世紀頃に中国で発明されたといわれているそれらの技法は、推古18年に朝鮮半島からひとりの僧によって日本に伝えられたと文献に残っている。その後、平安時代になると日本独自の紙漉きの技法も開発されていく。
「こんな紙もあるんですよ」と紙屋さんが店の棚の高いところから引っ張り出してきてくれたものは、今から20年前に漉かれたという中国の紙だった。正方形に近い紙は、どの紙よりもゆるく薄く漉かれていて、それでいて張りがある。
同じひとつの製法で漉かれたはずの手漉き紙だが、すこしずつ違っている。異なる紙を、窓辺に吊るすと、光は同じようにそれぞれを射す。

ひとが頭上に掲げた火の光は、辺りを照らす。字の成り立ちとなった「誰か」の姿を思うと、字が生まれる以前の古代東洋のさまざまな場所で見られた景色だったのではないかと想像もふくらむ。
「光」を、すこしずつ異なる紙に書きながら、東洋が共に抱えてきたものをあらためて確かめたい今がある。
華雪(2018.06.06)


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『光』

会期:2018.7.1 sun. - 7.15 sun.
Open 13:00-19:00 Closed on Mon, Tue

会場:BLOCKHOUSE B1F
   東京都渋谷区神宮前6-12-9
   http://blockhouse.jp/

企画:アイランドジャパン株式会社
http://islandjapan.com/

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〈 同時開催 〉

『花』

会期:2018.7.7 sat. - 7.14 sat.
Open 11:00-19:00 Open Everyday
(最終日7/14のみ17:00まで)

会場:SPOON BILL
東京都港区南青山4丁目23−9
http://www.spoon-bill.jp

企画:STARMINE PLANNING
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